浦安市議会(8)

千葉県浦安市の2022年3月議会において8回目のNMRパイプテクターに対する一般質問が行われました(2022年3月14日)。
浦安市議会でのパイプテクター質疑の経緯

  • 2020年 浦安市教育委員会が浦安文化会館へのパイプテクター設置の予算を計上
  • 2020年6月25日 議会にて、科学的根拠のない高額な製品を随意契約で購入することが疑問視
  • 2020年9月29日 週刊新潮に取り上げられる
  • 2020年9月25日 議会にて市長が「時間をかけて経過観察」と回答
  • 2020年10月 市長が導入棚上げの意向を示す
  • 2020年12月17日 議会にて、科学的根拠を確認するよう質問
  • 2021年3月4日 議会にて、設置断念ではなく翌年度予算の繰越であることが疑問視
  • 2021年6月22日 議会にて、装置の効果判定基準がないまま購入されたことが疑問視
  • 2021年7月2日 浦安市がパイプテクター業者社長を呼び出して聞き取り(有効な回答は得られず)
  • 2021年7月2日 業者サイトに「市会議員が営業を妨害する目的で〜批判を繰り返し行っている」との記事が掲載
  • 2021年7月6日 浦安市が業者に5項目の照会状を発送(5項目へ具体的な回答は得られず)
  • 2021年8月2日 浦安市が業者に書面にて再照会(有効な回答は得られず)
  • 2021年9月13日 浦安市が業者社員を呼び出して聞き取り(「10月ごろの論文提出」とのこと)
  • 2021年9月22日 議会にて、市長が「科学的根拠の確認〜できなければ〜導入は難しい」との答弁
  • 2021年11月5日 10月中に報告が得られなかったため書面で照会
  • 2021年11月15日 「うらやす議会だより」に市長答弁「科学的根拠の確認ができなければ〜導入は難しい」が掲載
  • 2021年11月16日 販売会社より「機密事項なので論文提出を控えている」との回答
  • 2021年12月17日 議会にて、導入部署が「年度内に結論」と回答

議員

2年越しの話になってしまうんですけれど。この3月、今月ですか。市が求めている回答が出てくるのかどうか。
もし出てこなかった場合、市は今後どうするのか。市の求めている回答というのはパイプテクターの性能の学術的な論文ですね。あるいは学者名、それが明らかになるのかどうか。教えてください。

生涯学習部長

メーカーからは依然として論文の内容や提出期限などが示されておりません。
現時点において、科学的根拠が確認できていないという状況でございます。
そのため、ご質問にありました、回答が出てきた場合、出てこない場合、いずれの場合におきましても。このNMRパイプテクターの文化会館への導入の検討は、実証試験期間である3月末をもって終了したいというふうに考えております。以上です。

議員

そもそも昨年11月16日ですか、この会社が浦安市に提出された文章には「機密情報を明らかにする必要がある論文を出すのを控えております」。要するに、もう昨年の11月の段階で、もし万が一、この会社が私たちが欲しいものを入手していたとしても、機密情報に入っちゃうから控えるとはっきり言ってきているんですよね
そいういう意味では市はもっと早くにね、今の結論を出すべきだったと思うんですけれども。ちょっと残念です。

あと、それから、市内の共同住宅で、全く同じ、サイズは違うんですけれど、同じメーカーさんのものを取り扱うかどうかということで調査しております。それで、この団地では導入を検討してきたけども、特別委員会みたいな設置したようで「この装置を設置することで給水管内の赤錆を黒錆に変化させて配管を延命更生できるとは断定できない」。
要するに「できない」ということで、まあ、結局取り扱わないというね、そういう、ちゃんと、然るべき機関にお金を使って調査を依頼して結論を出してきております。
たぶん市にもこの情報入ってると思うんですけれど。で、今月の18日、提案ですけども、住民に対する説明会があるようなんで、ぜひ市も可能であれば参加して。どういうことなのか、市は独自にこういう調査をしていないんですよ。
あちらさんが、先方が出してくるね、数値、低いんだ高いんだっていう、それだけで。この団地がやったのは、数字じゃないんですよ。水の赤錆と黒錆がという数字じゃなくて。そもそもあの機械は言っているような性能があるのかどうか。その調査を然るべき機関でやっているようなんです。

ですから、ぜひ、市からお願いして、その説明会に参加していただきたいと思います。 要望です。
こういう、私が議会で取り上げなければ、多分何の問題もなく約2000万近いお金を支払っていたんだろうなと思うと、ちょとゾッとずる事例なんです。

事実上の導入撤回

市の回答は「導入の検討を3月末で終了」と分かりにくいが「購入を止めた」と解釈して良いだろう。
浦安市長も以前「論文が発表され、科学的根拠の確認ができなければ今回の導入は難しい」と答弁している。論文が出てこない以上は購入をやめるしかない。

市が言葉を濁したのは、コロナ禍における「除菌製品トラブル」を参考にしたのかもしれない。
行政が次亜塩素酸水や空間除菌を非奨励としたことに販売会社から猛反発を受け、コメントの文言を変えるなどの事態が起きている。
浦安市が活水器について明確なコメントを出すと、メーカーからクレームを受けることになると考えていた可能性がある。
効果の有無で争わずに、「必要書類が提出されなかった」という体裁で購入を回避することは、落とし所の一つとしては妥当に思われる。

「論文」の謎

行政から製品の根拠を求められて「機密なので開示できない」ということがあり得るのだろうか?
たしかに研究機関において、機密保持のために論文を公開しないことはあり得る。知的所有権を主張するためには「公知でないこと」という条件があるため、まず特許を申請し、それが通ってから論文を公開することが一般的な手順だ。あるいは、機密性が非常に高いため特許すら申請せず、論文も提出しないという企業もあるだろう。
ただし、パイプテクター騒動においてこれらのケースは当てはまらない。パイプテクターは「流体活性化装置」として特許3952477号を取得しており、その技術は既に公知になっているからだ。
メーカーに求められているのは、特許内容について「このような実験で確かめた」と説明するだけのことであろう。すでに公知になっている技術について、なぜ改めて「大学で研究」する必要があるのか理解に苦しむ。
これまで「特許を取った、論文を発表した」と宣伝していながら、今更「機密なので公開できない」という話はチグハグだ。

百歩譲って「機密なので論文が出せない」としても、製品の科学的根拠を証明する方法は無数に考えられる。
例えば、装置からはマイクロ波が放出され続けているそうだから、その電界強度を提出することに何ら不都合はないだろう。
あるいは、装置を通過した水からは電子が放出されるそうだから、その電位差を測定することも容易であろう。実際、他社の「電子防錆装置」(科学的に根拠がある)では、対地電位を測定することで効果を最適化している。
そういった地道な検証を疎かにして「機密だから言えない」と主張することは、製品に根拠がないことを宣伝しているに等しい。

今後の展開

文化会館への導入は事実上の撤回となったが、「市民プラザ」ではパイプテクターを購入してしまっている。
メーカーの効果測定では、市民プラザでは基準値を満たせないままであるという。数値上で効果が見られずメーカーが製品の根拠を示せない以上、市民プラザの装置がそのままという訳には行かないだろう。